Authors : |
市川秀昭, 高橋徹, 荻原裕之, 坂田一宏, 大滝章男, 鈴木政夫, 大矢敏裕, 富沢直樹, 石川進, 森下靖雄 |
Abstract : |
脳死ドナー内でのグラフト機能低下を防止するために, 低体温法を導入しその有効性を検討した. 雑種成犬43頭を用い, 脳死判定後6時間の呼吸循環管理を行った. 管理中の食道温の相違で低温群(31.8±0.3℃;mean±SEM, n=21)と常温群(37.2±0.3℃, n=22)に分けた. 循環動態の他に, カテコラミン必要量, Double Product (DP), 心筋酸素摂取率, 冠状静脈血中乳酸値を測定した. 脳死管理後に低温群及び常温群から6頭ずつ心臓を摘出, 12時間浸漬保存後に同所性移植し左室収縮期圧(LVP)と左室圧一次微分(LVdp/dt)を測定した. (1)脳死管理中の心拍数, DP, カテコラミン使用量は低温群で低く, 特に脳死6時間後で有意差(p<0.05)がみられた(低温群で148±5/分, 11,873±654, ドパミン4.0±0.3γ, ドブタミン3.6±0.4γ;常温群で各々170±7/分, 15,380±905, ドパミン5.3±0.6γ, ドブタミン5.1±0.6γ). 乳酸値, 酸素摂取率も低温群で低値であった. 平均血圧, LVdp/dt, 心拍出量, 心筋組織血流量に差はなかった. (2)移植後のLVPの回復率は低温群で88±10%, 常温群で41±7%であり, LVdp/dtのそれは低温群で97±15%, 常温群で42±7%であった. LVP, LVdp/dt共に低温群で有意に(p<0.05)良好であった. 脳死ドナーを低体温管理することで, 心負荷が軽減し, 移植後急性期の心機能を良好に保ち得た. |