Abstract : |
大動脈基部再建にあたり, 弁付きcomposite graftと冠状動脈口間を人工血管を用いて再建するCabrol手術及びPiehler手術を24例に施行した. 基礎疾患はannulo-aortic ectasia 21例(うちA型大動脈解離合併10例), 大動脈弁閉鎖不全を伴う大動脈解離3例であった. 手術時, 冠状動脈再建に起因するトラブルは, Cabrol群16例中4例(冠状動脈グラフトのkinking 2例, 左冠状動脈血行障害1例, wrapping腔内の血腫による冠状動脈グラフト圧迫1例), Piehler群8例中1例(冠状動脈グラフト周囲のwrappingによる左冠状動脈グラフト血行障害)に認め, 冠状動脈再建はPiehler群においてより簡便且つ確実であった. 24例中在院死亡はCabrol群の4例(16.7%)に認め, 死亡原因は低心拍出症候群(LOS)3例, 遺残瘤破裂1例であった. 耐術20例の術後造影では, pseudoaneurysmや吻合部狭窄発生例はなく, 遠隔期の冠状動脈グラフト閉塞例も認めなかったが, Piehler群の1例で冠状動脈グラフトと左冠状動脈口との吻合部狭窄発生例を認め, 冠状動脈バイパス術を必要とした. 以上より, Piehler法を用いることにより大動脈基部置換時の冠状動脈再建における合併症を減少させることができたが, 一方, これら冠状動脈グラフトを用いた大動脈基部再建術においては, 遠隔期の心筋虚血に対する綿密な評価・follow-upが必要と考えられる. |