Abstract : |
従来全迷切後の食道再建胃管内鬱滞防止を意図として慣習的に付加してきた幽門形成術の意義を, 現在われわれが用いている大彎側胃管の機能並びに栄養面から評価を加えた. 対象は1992年1月~1995年1月の間に胸部食道を亜全摘し大彎側胃管で再建した67例(幽門形成術付加のP群34例, 非付加のN群33例)で機能評価は(1)術後摂食状況スコア(2)バリウム粒排泄時間(3)99mTc-Scintigramによる胃管排泄機能(4)75g-OGTTの4項目を, 栄養面での評価は(1)Rapid Turn-over Protein (RTP)(2)総合リンパ球数(TLC)(3)小野寺の予後推定指数(PNI)(4)体重増減率の4項目で経時的に観察した. 幽門形成術付加は機能面からは術後の逆流症状や愁訴を軽減する効果があり特に胸壁前経路では有用と思われたが, 胸骨後経路再建例では両群とも愁訴は少なく, P群でむしろダンピング症状を伴う症例もあった. バリウム粒, 99mTc-Scintigramによる胃内排泄機能検査はP群≧N群の傾向があった. 栄養評価項目は何れも経時的変化では両群間に差はなかったが, N群のなかの胃管排泄遅延型症例では低栄養傾向を認め, 社会復帰が遅れる例もあった. 以上より再建胃管の幽門形成術の付加は必須ではないが, 食事に関するQOLに効果的に作用すると考えられた. |