Abstract : |
胸部食道癌切除患者18例を対象に, 従来測定困難であった術後早期の再建胃管あるいは挙上結腸の経時的な血流状態をトノメータによるpHi測定により検討した. 18例のpHiは術後1時間後に最も低値(平均7.211)となり6時間以降有意に上昇し, 12時間以降は7.3以上の値で漸増した. DO2及びVO2は術後1時間から6時間にかけて有意に増加し, 以後の変化はみられなかったが, pHiは6時間から12時間以降も上昇が持続し, 全身循環が十分な状況下でも再建臓器への血流低下の存在が示された. マイナーリークの2例では術後3時間において低下がみられ, 胃管穿孔の1例のpHiは12時間に低下し, 経過中の最低値7.06を呈した. また肺酸素化能の指標であるM-indexは12, 24時間においてpHiと有意の負の相関を認め, pHiの値は再建臓器の血流だけでなく肺障害とも関連することが示唆された. これらの結果より, 術後早期, 特に術後12時間以内のpHiの値及び改善度は食道癌術後合併症の中で最も重要となる縫合不全及び呼吸障害発生の予測に対し有用な指標となるものと考えられた. |