アブストラクト(44巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : リング付人工血管を用いた大動脈解離の外科治療-残存解離腔と遠隔成績からみた問題点-
Subtitle :
Authors : 佐々木建志, 田中茂夫
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 44
Number : 7
Page : 923-935
Year/Month : 1996 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大動脈解離手術症例の術後遠隔成績と残存解離腔の状態について, リング付人工血管を用いた症例(RIG群:31例)と通常の人工血管置換術を行った症例(GR群:17例)の比較検討を行った. また, 解離の重症度を具体的に表現することを目的としたscoring system(解離スコア:dissection score; DS)を考案し, このスコアを用いて, 術前後における解離腔の状態及び変化について検討を行った. RIG群とGR群の遠隔成績を比較すると, 生存率, 解離関連event-free survivalともにGR群がRIG群より良い傾向を示したが, 有意差はなかった. Entry切除例と非切除例の遠隔成績を比較すると, 5年生存率は両群間に差がなかったが(切除例76%, 非切除例64%), 5-year event-free survivalは, entry切除例が非切除例より良い傾向を示した(切除例72%, 非切除例33%;p=0.06). 術前後の解離 スコア(DS)の変化は, RIG群, GR群ともに術後有意に減少した. Entry切除と術前後のDSの変化との関係をみると, entry切除例のDSは術後有意に減少したのに対し, 非切除例のDSは術前後で差がなかった. 術後のDSの減少率(%R)は, entry切除例61%, 非切除例29%で, entry切除例で 有意に大きかった(p<0. 02). 解離関連eventの合併と術前後のDSの変化との関係をみると, event非合併例のDSは術後有意に減少したが, event合併例のDSは術前後で差がなかった. 大動脈解離外科治療において, entry切除の可否は, 手術成績のみならず術後遠隔成績にも重大な影響をもたらすと考えられた. また, 本症に対するリング付人工血管の使用については, 手技の改善と適応の見直しが必要であり, entry切除を重視した場合, その適応はかなり限定されると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈解離, 残存解離腔, リング付人工血管
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