アブストラクト(44巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術におけるアプロチニン投与のPitfall
Subtitle :
Authors : 入江寛, 北村信夫, 康徳光, 木村俊一, 熊野浩, 春藤啓介, 野地智, 山口明満
Authors(kana) :
Organization : 国立大阪病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 44
Number : 8
Page : 1119-1123
Year/Month : 1996 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術中のアプロチニンは, 出血量の減少と無輸血率の向上に各施設で使用され, その有効性を認めたとの報告が多い. 本院でのアプロチニン使用症例(45例)でも, 有効性を示している. しかし, アプロチニン投与によると思われる体外循環離脱時のLow out put syndrome(LOS)症例(8例)を経験しており, 思わぬ陥穿がある可能性がある. アプロチニンの投与量を, High dose group:30万単位投与(17例), Medium dose group:150万単位投与(20例), Low dose group:100万単位投与(8例), Control group:アプロチニン非投与群(15例)に分けて検討した. 結果は, アプロチニン投与が高用量になるに伴い, 術後出血量は減少した. すなわち, High dose groupとMedium dose groupでControl groupとの間に有意な減少をみたが, Low dose groupでは有意差はなかった. 術後のpeak CPKとpeak CPK-MBは有意差がないもののアプロチニン投与量の増加に伴い高値を示す傾向にあった. しかし, そのためか, アプロチニン使用45例のうち8例(17.8%)が体外循環離脱時のLOSに陥りintraaortic balloon pumping(IABP)補助を必要とした. その内7例は周術期心筋梗塞(PMI)と診断された. LOSの誘因はアプロチニン投与以外は考えにくく, アプロチニン投与による体外循環中のmicro-embolism, によると推測した. その根拠として, 2つの原因を考えている. 第1点は, 30℃~35℃(膀胱温)の体外循環温度がアプロチニンの線溶系抑制作用を助長しすぎたこと, 第2点は, 体外循環中のactivated coagulation time(ACT)のcontrolである. 以上より, アプロチニンの使用症例では体外循環温度を高くしないことと, 体外循環中のACTのcontrolを厳重に行うことが重要と考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : アプロチニン, micro embolism, 体外循環温度, 線溶系抑制作用
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