アブストラクト(44巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 慢性透析患者の開心術-成績向上のための寄与因子の検討-
Subtitle : 原著
Authors : 渋谷益宏, 北村昌也, 小柳俊哉, 八田光弘, 西田博, 遠藤真弘, 橋本明政, 小柳仁
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 44
Number : 9
Page : 1698-1703
Year/Month : 1996 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1985年3月から1993年2月までの8年間に当科で行った慢性透析患者(HD.Pt)の術中透析併用開心術36例(単独虚血性心疾患24例, 弁膜症9例, 先天性心疾患3例)を対象とし期間別, 疾患別に術後成績を比較検討すると共に, 周術期から慢性期にわたる術後合併症や術後成績向上の寄与因子を検討した. 術後観察期間は最長7.5年(平均2.3年)で, 術後成績は手術時期別では前期(12例)4年と後期(24例)4年に分け, 疾患別ではA群(虚血性心疾患24例)とB群(弁膜症及び先天性心疾患12例)に分けて比較した. 術後の早期死亡は前期に1例(8.3%, LOS)のみと後期で改善傾向を認めた. 術後遠隔期の死亡は前期11例中5例(45.3%), 後期24例中2例(8.3%)で後期に著明な改善が得られた(p<0.025). 更に実測生存率は術後3年で前期72.7%, 後期91.3%と同様に後期で明らかに良好であった(p<0.05). 疾患別実測生存率は術後6年でA群84.6%, B群45.5%とA群で有意に高かった(p<0.05). 遠隔期死亡原因は前期では脳出血4例, 突然死1例で, 後期の2例は脳動脈瘤合併のクモ膜下出血とDICであった. 脳出血は致死的合併症として重要であり, 後期における脳出血の防止策としてA群ではワーファリンを服用せず, B群のワーファリン服用例ではトロンボテスト値を高めに維持した. 更に高血圧の管理をACE阻害剤等の強力な降圧剤の導入により厳重に行った. 他の合併症として腎不全患者に特徴的な体液貯留(胸水, 心嚢液)は15例(41.7%:心嚢ドレナージ術施行2例)と周術期に高頻度に認められた. 感染は7例(肺炎2例, 創部感染症3例, 腸炎1例, 敗血症1例), 炎症性臓器障害は5例(急性膵炎4例, 急性胆嚢炎1例)であった. 周術期から遠隔期にわたり, (1)厳重な高血圧の管理, (2)ヘパリンを使用しない血液透析の導入, (3)ワーファリン服用を要する慢性透析弁膜患者ではトロンボテスト値を高めに維持した慎重な抗凝血薬療法, これらにより致死的な出血性合併症は減少し, また他の合併症には早期対応することにより最近の慢性透析患者に対する開心術の成績は著明に改善した. (日本胸部外科学会雑誌1996;44:1698-1703)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 慢性透析, 開心術後成績, 術後合併症, 抗凝血薬療法
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