アブストラクト(44巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 非解離性遠位弓部並びに近位胸部下行大動脈瘤の手術方法と補助手段-弓部大動脈遮断の有無を中心に-
Subtitle : 原著
Authors : 稲田洋, 正木久男, 村上泰治, 藤原巍
Authors(kana) :
Organization : 川崎医科大学胸部心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 44
Number : 9
Page : 1709-1716
Year/Month : 1996 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 非解離性遠位弓部大動脈瘤及び近位胸部下行大動脈瘤の手術における弓部大動脈遮断の問題を中心に検討した. 当科では本症に対し1978年以降46例に対し手術を施行した. 1990年以前は弓部大動脈に遮断を加えていたが, 同年以後, 脳分離体外循環を積極的に使用し遮断を行わない方針をとった. 遮断群25例, 非遮断群21例であったが, 各々を比較すると術後合併症で脳障害(28% vs 14%), 出血(16% vs 5%)の発生, 手術死亡率(20% vs 14%), 在院死亡率(32% vs 19%)と非遮断群の成績が良好な傾向が認められた. 特に遮断群を腕頭動脈・左総頸動脈間遮断群と左総頸動脈・鎖骨下動脈間遮断群に分けて非遮断群と比較すると腕頭動脈・左総頸動脈間遮断群は非遮断群に比べ術後脳障害(60% vs 14%), 出血(30% vs 5%), 急性腎不全(20% vs 0%)の合併率が高く, 手術死亡率(40% vs 14%), 在院死亡率(50% vs 19%)も不良である傾向が認められた. 本症の手術では動脈瘤に近接して弓部大動脈で中枢側遮断を行うことが同部での吻合操作を困難なものとし, 出血の危険性を増し, また弓部大動脈の剥離, 遮断操作が脳梗塞の危険性を増すものと考えられた. 本手術では胸骨正中切開・脳分離体外循環を積極的に使用し, 特に腕頭動脈・左鎖骨下動脈間では遮断を加えないようにすべきである. ただ胸骨正中切開では瘤の末梢病変が主肺動脈の高さ以下に進展している場合に処置が困難であり, 脳分離体外循環以外の補助手段も考慮する必要がある. また外傷性大動脈瘤の緊急手術の際には多発外傷による出血の危険から膜型肺付き遠心ポンプを使用し弓部大動脈での中枢遮断を行うことが適切であろう. (日本胸部外科学会雑誌1996;44:1709-1716)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 遠位弓部大動脈瘤, 近位胸部下行大動脈瘤, 脳分離体外循環
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