アブストラクト(44巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 眼球結膜組織血流量測定法による脳血流モニターの研究
Subtitle : 原著
Authors : 大谷則史, 久保良彦
Authors(kana) :
Organization : 旭川医科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 44
Number : 9
Page : 1721-1728
Year/Month : 1996 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 脳分離体外循環や弓部分枝再建時における無侵襲脳血流モニターの開発を目指し, 眼球結膜組織血流量(CBF)測定法による脳血流評価法を検討した. ヒトでは眼球結膜の血行は主に眼動脈に支配されている. その眼動脈は内頸動脈から起始する大脳動脈系に最も近接した動脈枝であることから, 大脳領域の血行モニターとしてCBFを測定することは極めて合理的と考えられる. そこでレーザードップラー血流測定法を用いた無侵襲脳血流評価法を開発し実験的及び臨床的に検討を加えた. CBF測定にはレーザードップラー血流測定装置(アドバンス社, Model ALF 201)及び, 外径7.5×4.0×2.0mmの専用プローブを試作した. 動物実験では雑犬8頭で本測定法の妥当性と応答精度を検討した. 頸動脈遮断に対するCBFの反応量応答性は, 応答開始時間が1.35±0.85(平均±S.D.)秒で, 瞬時に眼球結膜の血流は低下し(9.60±4.15秒)最低値に達した(n=6). 遮断解除後の血流回復時間は7.70±3.75秒であった. またCBFは大脳皮質組織血流量(r=0.78, p<0.001, n=2)との間に良好な相関がみられた. 臨床検討においては弓部大動脈瘤2例, 僧帽弁閉鎖不全症1例, 炎症性鎖骨下動脈瘤1例の術中脳血流モニターとしてCBFを測定した. いずれの症例においても頸動脈遮断によるCBFの反応性は良好で, 低体温時にもポンプの駆動に同期した明瞭な血流波型が描出され, 体外循環時のポンプ血流波形を捕えることができた. 本法は脳血流異常の定量的評価だけでなく, 適切な脳灌流を行う上での応答信頼性と即時性が高く, 無侵襲脳血流モニターとして優れていると考えられた. (日本胸部外科学会雑誌1996;44:1721-1728)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 脳分離体外循環, レーザードップラー, ドップラー血流測定法, 脳血流モニター, 弓部分枝血行再建
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