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Na+/H+交換機構阻害薬であるアミロライドを用いて, 摘出ラット虚血再灌流心に対する心筋保護効果について検討した. 20分間Langendorff灌流（70cm水柱圧, 37℃）し, 30分間37℃の常温虚血後, 30分間再灌流を行った群を対照群（C群）とした. これに対し, 虚血前の5分間に灌流液中に0.1mMアミロライドを添加した後, C群と同様に虚血再灌流を行った群をA群とした. 虚血前にアミロライド投与によって, 心拍数は減少し, 左室内圧は増加した. 再灌流時の心拍数の回復はA群が緩やかであったが, 左室内圧の回復は再灌流の全期を通じて, A群の方がC群より有意に良好であった. 原子吸光法で求めた細胞内Na+含量〈Na+〉iは, 両群とも30分の虚血によって増加したが, 再灌流時にC群では〈Na+〉iの持続的低下をみたのに対して, A群では再灌流早期（5分）の〈Na+〉iの蓄積が抑制され, 再灌流後期（30分）の〈Na+〉iの持続的低下は認められなかった. 細胞内Ca2+含量〈Ca2+〉iは, C群では虚血再灌流によって〈Ca2+〉iの持続的増加を認めた. A群では再灌流早期の〈Ca2+〉iの蓄積を抑制できなかったが, 再灌流後期の〈Ca2+〉iの増加を有意に抑制した. 再灌流時の不整脈発現, CPK流出は, C群に比してA群で有意に低かった. 以上の結果より, Na+/H+交換機構の阻害剤であるアミロライドが再灌流早期に細胞内Na+の蓄積を阻害し, 再灌流後期の細胞内Ca2+蓄積を予防して心筋保護効果を発現したものと考えられた. （日本胸部外科学会雑誌1996；44：1735－1741） |
