| Authors ： |
原口秀司, 小泉潔, 五味渕誠, 松島伸治, 真崎義隆, 秋山博彦, 三上厳, 福島光浩, 飯田竹美, 田中茂夫 |
| Abstract ： |
気管支形成を伴わない肺剔除例（全胸膜肺剔除術を含む）76例を対象として, 術後気管支断端瘻（以下BPF）の危険因子について検討した. BPFは6例（7.9％）に発症し, 気管支鏡で確定診断した. 全例男性で平均年齢は60.2歳, 平均第12.3病日（第7～21病日）に発症した. 全例扁平上皮癌で, 病理病期は, IIIA期3例, IIIB期3例であった. 非BPF例を対照として各種因子を比較検討した. 単変量解析では, 術前感染, 右肺剔除術, 気管分岐下リンパ節転移が危険因子であった. しかし, 性, 年齢, 手術時間, 出血量, 輸血量, 喫煙歴, リンパ節郭清範囲, 根治性, 合併切除（心嚢のみは除く）, 組織型, 腫瘍径, 病理病期, 腫瘍断端遺残, 気管支断端縫合法（器械縫合か用手法か）などに有意差は認めなかった. 重回帰分析（逐次選択法）では, 術前感染, 気管分岐下リンパ節転移, 右肺剔除術, 合併切除が有用な因子であった. 気管分岐下リンパ節転移例ではリンパ節外に浸潤した症例が多く, 広範に気管鞘を含めて腫大リンパ節を一塊として摘出する際, 気管支動脈を温存できず血行上不利となった場合が多くBPF発症が高率であったと考えた. 右肺剔除術にBPFが多いのは, 左肺剔除術では気管支断端は大動脈, 肺動脈, 食道などに囲まれるが, 右肺剔除術では胸腔内に突出し周囲臓器からの血行再建がないという解剖学的因子によるものと考えた. 術前感染の有無, 原因菌, 抗生剤感受性を把握し感染をコントロールすることや, 縦隔リンパ節郭清に際して気管支動脈の温存に配慮したり, 気管支断端の被覆がBPFの予防に重要であると考えた. |
