アブストラクト(44巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 超低体温下逆行性脳灌流法の許容時間に関する実験的検討
Subtitle :
Authors : 櫻田卓, 数井暉久, 田中久史, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 44
Number : 10
Page : 1860-1866
Year/Month : 1996 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 弓部大動脈瘤手術時の補助手段として用いられるようになった逆行性脳灌流(RCP)法の許容時間について, 雑種成犬を用いて実験的検討を行った. 上下大静脈脱血・大腿動脈鮮血の完全体外循環にて, 脳温20℃まで冷却した後, 両側顎静脈送血にてRCPを行い, その後, 体外循環開始前の脳温まで再加温した. 実験群は, I群:脳灌流60分(n=5), II群:脳灌流90分(n=8)の2群で行い, 体性感覚誘発電位(SEP)を用いて, 脳機能を評価した. また, 脳組織血流量(CBF), 脳組織酸素代謝率(CMRO2)及び病理組織学的検討を行った. SEPはRCP直後より消失した. I群では再加温により全例で波形は出現したが, その振幅は術前値の35.0±16.6%にとどまった. II群では8例中3例で波形は消失したままであった. また, RCP中のCBFはI群で1.0±0.4ml/100g/minと術前の2.4±1.7%, II群で0.8±0.3ml/100g/minで術前の2.1±0.8%であった. 再加温後のCMRO2は有意差はないものの, I群で83.5±58.6%, II群で68.7±20.6%と, II群で低い傾向を示した. 病理組織学的検討では, I群では虚血性変化を認めなかったが, II群では核及び原形質が萎縮し, 核小体や核漿の区別がつき難いなど虚血性変化を示す細胞を多数認めた. 本実験より, 20℃RCP法では, 十分な脳組織血流が得られず, 60分を超えると脳に不可逆的損傷を与える危険があることが示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 逆行性脳灌流法, 低体温, 許容時間, 脳機能, 体性感覚誘発電位
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