Abstract : |
成熟心では心筋保護液のmultidose投与がsingle-dose投与よりも有効であることが広く認められているが, 未熟心においてはmultidose投与が障害的に働くとする報告が多い. 今回, 細胞外液型のSt.Thomas, Tyers液及び細胞内液型のBretschneider液の心筋保護効果を新生児家兎摘出心を用い比較検討した. 生後7~10日の家兎摘出心workingモデル(n=8/群)を用いた. 20分のworking灌流を行い, 次に20℃, 10時間の虚血の後, 35分の再灌流(Langendorff灌流15分, working灌流20分)を行った. 心筋保護液注入は, single-dose, multidose法のいずれかを行った. 虚血後の回復を心拍出量, 冠血管抵抗, クレアチンキナーゼ逸脱量にて評価し, multidose群では各心筋保護液の注入毎の冠血管抵抗の変化を比較した. その結果, (1)St.Thomas, Tyers液ではsingle-dose法がmultidose法に比較し有意に良好な心拍出量回復率を示し, Bretschneider液でもsingle-dose法が良い回復率を示す傾向にあった. 各液の比較ではsingle-dose, multidoseの両法でSt.Thomas液が最もよく次いで Tyers, Bretschneider液の順であった. (2)再灌流後の冠血管抵抗は, St.Thomas, Tyers液ではsingle-dose法がmultidose法より低かったが, Bretschneider液ではmultidose法で低く保たれていた. (3)multidose群間の比較では, 注入時の冠血管抵抗変化はBretschneider液が最も低く保たれていた. 以上よりSt.Thomas, Tyers, Bretschneider液のいずれにおいてもsingle-dose法がmultidose法より心機能回復は良好であった. Bretschneider液のmultidose法では虚血中, 後の冠血管抵抗が最も低く保たれていたものの心機能回復は不良であり, 冠血管に対する効果と心機能回復率とは必ずしも相関しなかった. |