Abstract : |
鈍的外傷による胸部大動脈損傷5例を経験した. 緊急手術を行い1例は失ったが, 4例は良好な結果を得た. 症例1:22歳, 女性. 近位下行大動脈瘤に対し, 受傷2日後に体外循環下に人工血管置換術を行った. 症例2:17歳, 男性. 近位下行大動脈瘤に対し, 受傷24時間後に体外循環下に人工血管置換術を行った. 症例3:56歳, 女性. 近位下行大動脈瘤に対し, 受傷24時間後に体外循環下に人工血管置換術を施行した. 症例4:69歳, 男性. 弓部大動脈瘤に対し, 受傷1カ月後に分離体外循環下に弓部3分枝を含め人工血管置換術を行った. 症例5:21歳, 男性. 近位下行大動脈断裂性損傷に対し心マッサージ下に受傷2時間後に人工血管置換術を施行したが, 救命し得なかった. 症例5は失ったが, 他はすべて術後特に合併症もなく経過良好で, 現在職場に復帰している. 今回われわれの経験では, 損傷部瘤状変化を示していない大動脈壁にも広く及んでおり, 術前検査所見で予想される以上に広範囲であった. 鈍的外傷性胸部大動脈損傷の手術治療においては, その合併外傷の重症度を含めた術前の十分な精査と処置及び手術時期の決定が重要である. |