アブストラクト(45巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部食道癌根治術後遠隔期における呼吸運動能に関する臨床的研究
Subtitle :
Authors : 前田史一, 木下博明
Authors(kana) :
Organization : 大阪市立大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 45
Number : 1
Page : 1-11
Year/Month : 1997 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部食道癌根治術後の遠隔期における呼吸機能を, 術前後の一般呼吸機能検査と運動負荷による耐運動能の変化から検討した. また耐運動能の低下に関与する因子を多変量解析により検討した. 対象は右開胸開腹により胸部食道癌根治術が施行され, 術後3ヵ月以上経過した50例である. 運動負荷にはエルゴメーターを用い段階的漸増負荷法を行った. 一般呼吸機能検査では肺活量(l/m2)は術前平均2.1±0.4から術後平均1.7±0.3へと有意に低下したが, FEV 1.0%は術前後で有意差を認めなかった. 安静時酸素摂取量にも有意な変化はなかったが, 最大酸素摂取量(ml/min/kg)は術前平均22.3±5.2から術後平均20.0±4.3へと有意に低下した. 最大二酸化炭素排泄量も術前後で有意に低下した. 運動負荷中, 一回換気量は術後低下傾向, 呼吸数は増加傾向を示した. 心循環因子による運動制限は認められなかったが運動中の嫌気性代謝閾値は術後有意に低下した. 術前後の栄養状態では血液検査上有意な変化を認めなかった. 以上より耐運動能の低下は, 運動負荷時酸素摂取量の低下からの換気当量の増加により分時換気量中における死腔換気率が増加したことに加えて, 安静時からの拘束性換気障害による速く浅い呼吸パターンが呼吸筋疲労をもたらしたことによると考えられた. 多変量解析の結果, 耐運動能の低下に関与する因子は喫煙, 術前栄養状態, 年齢, 術後放射線療法であり, 遠隔期におけるQuality of life(QOL)を改善させるには, 栄養療法と持続的な筋力トレーニングによるリハビリテーションが必要であると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸部食道癌, 運動負荷試験, 呼吸機能, 耐運動能
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