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Ionescu-Shiley弁（ISP）による僧帽弁置換術後のprimary tissue failure（PTF）のために緊急再弁置換術が必要となった症例を中心に検討を加えた. 耐術者64例中PTFによる再手術は35例で, PTFを確認してから3日以内に手術を行った10例を緊急群, 4日以降の手術の25例を待機群とした. 再手術時年齢, 性比及び初回手術から再手術までの期間に両群間に有意差はなかった. 緊急群では8例に急性心不全を発症し, 4例は内科的治療抵抗性であった. 肉眼的血色素尿を8例に認め, このうち4例は急性腎不全を合併した. 待機群では10例に心不全を認めたが, 1例を除きNYHA 2度以下であった. また, 一過性の肉眼的血色素尿を8例に認めた. 両群間において術前血中ヘモグロビン濃度, ビリルビン, LDH値に有意差は認めなかった. 摘出弁所見ではすべての弁においてcommissural stitch部の弁尖にpunch-out状の小孔が認められ, ステント先端部から弁尖亀裂が始まっていた. 緊急群の弁尖亀裂は平均8.1±4.5mmと待機群の平均4.2±3.6mmに比べて大きかった（p＜0.05）. 29例（82.9％）と多くの症例でステント内側の心内膜化の欠如が認められ, 溶血併発の機序を裏付けた. 治療成績は緊急群では病院死亡2例（20.0％）, 待機群では4例（16.0％）で, 耐術者の遠隔成績は良好であった. ISP弁のPTFによる弁機能不全35例中10例（28.6％）では, 弁破壊が急激に進行して緊急手術を余儀なくされている. 弁構造上の特性から今後は計画的再弁置換術を念頭において厳重に経過観察する必要がある. |
