Abstract : |
体外循環後に肺機能障害を生ずるメカニズムの一因に完全体外循環中の肺の虚血とそれに続く再灌流が関与することを疑い, 肺機能障害の予防を目的として持続肺動脈灌流を行い検討を加えた. 対象は1歳未満VSD根治術症例26例で, 7例に完全体外循環中の肺の換気(5回/min)と肺動脈への持続送血(30ml/kg/min)を行い(灌流群), 19例にはいずれも行わなかった(非灌流群). 全例で術前(control), 体外循環終了後3時間(3hr), 6時間(6hr), 12時間(12hr), 24時間(24hr)の各時点におけるPaO2/FiO2を測定し, 肺機能障害の指標とした. 両群ともにPaO2/FiO2は体外循環終了後徐々に低下し, 12hrで最低値となった. 非灌流時では12hrのPaO2/FiO2の平均値と, 手術時年齢, 体重との間に正の, Rp/Rsとの間に負の有意の相関関係を認め, 特にRp/Rsと強い相関関係を認めた(ρ=-0.734, p=0.0018). また両群のPaO2/FiO2の経時的変化を比較すると, 3hr, 6hr, 12hrで灌流群の方が高値を示したが, 両群間に有意差を認めなかった. 一方両群よりRp/Rs≧0.1の高肺血管抵抗の症例を選び(灌流群6例, 非灌流群11例)同様にPaO2/FiO2を比較すると, 3hr, 6hr, 12hrで灌流群の方が高値で, 12hrでは有意に高値を示した(灌流群291.1±15.5, 非灌流群199.6±27.0, p=0.027). 以上の結果を総合すると低年齢, 低体重, 高肺血管抵抗が, 術後の肺機能障害の危険因子として考えられた. また体外循環後に合併する肺機能障害のメカニズムは主として虚血再灌流障害によると考えられ, その予防に持続肺動脈灌流が有用であると思われた. 特に高肺血管抵抗の症例において明らかな効果が認められた. |