アブストラクト(45巻5号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 新たに開発されたシリコンコーティング人工肺に関する実験的検討
Subtitle :
Authors : 飯田充, 瀬在幸安
Authors(kana) :
Organization : 日本大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 45
Number : 5
Page : 700-710
Year/Month : 1997 / 5
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工心肺中にはヘパリンの使用にも関わらず, 血球及び血漿成分が物理的損傷を受け, 凝固・線溶系の亢進, 補体の活性化など, 生体に悪影響を及ぼすことが知られている. 一方, シリコンは本来血液適合性にすぐれ, 血球成分の破壊が少ないとされている. そこで, 約0.2μmまで薄膜化されたシリコンをホロファイバーの外側にコーティングした人工肺を試作し, 6時間の長期常温体外循環下(急性実験)と, 96時間の覚醒下長期心肺補助(慢性実験)において実験的に検討した. 対象はヤギを用い, 急性実験は右総頸動脈送血, 上,下大静脈脱血で, 落差脱血によるワンポンプ-ワンリザーバーシステムで完全体外循環を行った. 慢性実験は, 経皮的右房脱血, 右総頸動脈送血で遠心ポンプを使用して循環した. 人工肺は, コーティングされていない人工肺(急性実験はメラエクセランHPO-15H, 慢性実験はHPO-08H)と, 同型の人工肺にシリコンコーティングしたものを使用した. 動脈圧, 流量は両群とも有意差なく維持された. ガス交換能は両群とも良好に保たれ, 有意差はなかった. 溶血では, Free-Hbが, シリコンコーティング群において低い傾向がみられた. 凝固線溶系は, 長期循環において72時間以後, シリコンコーティング群において抑制が認められた. 補体系, 血小板系では有意差はなかった. 電顕所見では, 赤血球集合体がシリコンコーティング群においてほとんど認められなかった. シリコンコーティング人工肺は, 安定したガス交換能を示し, 更に生体適合性, 抗血栓性の点において優れており, 長期の体外循環, 心肺補助の使用に適していると思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 外部灌流型膜型肺, シリコンコーティング, 体外循環, 長期心肺補助
このページの一番上へ