アブストラクト(45巻5号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 縦隔リンパ節転移陽性肺癌(pN2, pN3α)のリンパ節転移の実態と予後因子-拡大郭清例の検討-
Subtitle :
Authors : 坂尾幸則*, 羽田圓城, 宮元秀昭, 原田龍一, 濱田哲郎
Authors(kana) :
Organization : 三井記念病院呼吸器センター外科, *佐賀医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 45
Number : 5
Page : 711-717
Year/Month : 1997 / 5
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 拡大郭清を施行した縦隔リンパ節転移陽性肺癌症例の予後因子を検討し, どのような症例で特に拡大郭清の効果が期待できるか検討した. 対象は1984年から1994年までに手術された原発性肺癌のうち, 右肺癌では拡大R2b(対側#4を含む)以上, 左肺癌ではR3(両側縦隔郭清)が施行された56例である. 転移状況は右肺癌では対側#4を除けば基本的に同側(気管前を含む)縦隔への転移を示し, N2b領域への転移がpN2例の25%に認められた. 左肺癌では上縦隔上部(#1)では対側縦隔のみに転移を認めた. また上葉原発での#7転移は左右合わせて23%に認められた. pN2例全体の5生率は48%で, なかでもT1, T2例(N=22)では5生率67%と非常に良好であった. 一方, T4例(N=9)では3生例を認めず, 50%生存率が23カ月であり拡大郭清の効果は低かった. 複数のステーションに転移を認めた例(pN3α例11例を含む30例)と単一のステーションに転移が止まっていた例20例を比較すると, 5生率で45%, 62%と後者がやや予後が良好であったが有意差は認めず, T1, T2症例(N=20)に限って検討すると, 複数ステーション転移例の5生率が65%と単一ステーション転移例の5生率72%と同様に良好な予後であった. 一方, CNではコンベンショナルCTのサイズクライテリアによるpN2例の正診率は47%と低く, CN0:31%を含み過小評価が多かった. 予後ではCN0例(N=14)の5生率が85%と非常に良好であった. また, CN2例でもT1, T2症例(N=11)では4生率55%と比較的予後は良好であった. pN2例の腺癌22例と扁平上皮癌13例では5生率で56%と43%と有意差を認めなかった. 以上より現時点では術前のCTによるN診断は信頼性に乏しく, それによる郭清範囲の縮小は危険と考えられる. また進行したT因子(T4)がなければ, 例え複数ステーションに転移を認めても拡大郭清によるpN2例の予後の改善が期待される. 左肺癌のpN3α例6例(平均観察期間34カ月, 最長生存60カ月)は現在まで全例生存中であり, 対側縦隔郭清の意義が示唆された. 一方, 右肺癌のpN3α例(術死1例を除く)5例(平均観察記聞37カ月, 最長生存50カ月)では3生率30%にあまり予後は良くなかった. 右肺癌におけるpN3α(対側縦隔転移例)に対するR3郭清の意義については今後更なる検討が必要である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 縦隔リンパ節転移, N2, N3α, 拡大郭清, 両側縦隔郭清(R3)
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