Authors : |
蓑原靖一良, 麻田邦夫, 近藤敬一郎, 巽孝彦, 長谷川滋人, 澤田吉英, 森本大成, 松山南律, 佐々木進次郎 |
Abstract : |
アプロチニンの冠状動脈バイパス術(CABG)における止血効果とグラフト開存に及ぼす影響について検討した. 対象は, 1992-1994年に行ったCABG 222例中, 術後にグラフト造影が施行できた200例である. アプロチニン150万単位投与の55例をA群, 30万単位投与の13例をB群, 投与しなかった132例をC群とし, 比較検討した. 年齢, 男女比には差はなく, 体外循環時間はC群が短い傾向が認められた. 平均病変枝数, 平均バイパス数, 平均内胸動脈(ITA)使用率は3群間に差はなかった. 総吻合山開存率(A群:90.5%, B群:96.4%, C群:96.5%), 大伏在静脈グラフト吻合部開存率(A群:90.4%, B群:95.3%, C群:95.5%), ITA吻合部開存率(A群:91.1%, B群:100%, C群:99.2%)は, 共にB, C群に比べA群が有意に低く, 周術期心筋梗塞発生率(A群:3.7%, B群:0%, C群:0.76%)はA群に高い傾向が認められた. また, 再開胸止血術の頻度はA群が低い傾向が認められ, 体外循環終了から手術終了までの平均出血量(A群:136.0ml, B群:306.5ml, C群:272.0ml)は, A群が有意に少なかった. CABGにおけるアプロチニン投与は, 体外循環後の出血量の減少効果はあるが, グラフト開存性を低下させるため, ルーチンに使用すべきでなく, 緊急及び再手術などの出血の危険性がある症例などに限定すべきである. |