Abstract : |
従来より開心術中のヘパリン投与量はActivated Clotting Time(以下ACT)によって決定されてきた. しかし個体間でのヘパリン感受性の違い, 希釈率や低体温によるACTへの影響, 代謝による経時的ヘパリン濃度の減少などにより凝固系の不適切な活性化が生じることで, 術中の塞栓症や術後の出血などが懸念される. Medtronic社製Hepcon(R)/HMSはACTと血中ヘパリン濃度の測定が可能で, 症例ごとのヘパリン感受性に応じて体外循環時の必要なヘパリン量や的確なプロタミン量を決定でき, その使用により開心術後の血液成分の保持及び出血量の軽減が期待される. そこでHepcon(R)/HMSの有用性を検討した. 対象は, 1996年1月から7月までに行った開心術中, 出血再開胸, 2nd run施行例, 新鮮血輸血施行例及びAprotinin投与例を除外した34例を対象とした. このうちHepcon(R)/HMS使用は19例, 従来のACT管理によるものは15例であった. プロトロンビン時間, 活性化部分トロンボプラスチン時間, Fbg, AT III, FDP, 血小板の変動, 術後輸血量及び出血量に両群間で有意差は認めなかった. Hepcon(R)/HMS使用群で術中使用ヘパリン量が有意に多く, プロタミン量が有意に少なかった. 従来の体外循環でのプロタミン過剰投与による副作用の軽減のためにも, Hepcon(R)/HMSの有用性が期待されると考えられた. |