Abstract : |
1995年1月から1996年12月までの2年間に, カテコラミン製剤のみ, あるいはカテコラミン製剤+大動脈内バルーンパンピング(IABP)にて心原性ショックを回避, 離脱できた9症例に対して, 急性期に動脈グラフトのみで冠状動脈バイパス術(CABG)を施行した. 発症から来院時までの所要時間は2~24(平均8±6)時間であり, 入院後すぐに冠状動脈造影を施行し, 原則としてその直後に手術を開始した. 入院時のCPK-MBは14~184(平均67±61)IU/1であった. 症例の内訳は, アメリカ心臓病学会(AHA)分類で90%以上の主幹部狭窄を合併したものが3例, AMI部分に加えて99%狭窄を示す他枝が閉塞した場合に主幹部閉塞と同等であると判定されたものが3例, AMI部分に加えて99%狭窄を示す他枝が閉塞した場合に広範囲梗塞となり心原性ショックに陥ると推定されたものが3例であった. 術前にIABPが必要であった3例は術後も必要であったが, 新たにIABPを必要とした症例はなかった. 急性期手術は迅速性とグラフトの高流量を得る目的からこれまでは一般的に大伏在静脈が用いられてきたが, 今回われわれは動脈グラフトのみで平均2.3枝のバイパス術を施行した. 使用グラフトは右内胸動脈が8本, 左内胸動脈が9本, 右胃大網動脈が4本であり, 術後造影では左内胸動脈の2本がstring signを呈した以外は開存していた. 全例軽快退院した. 循環動態の安定した軽・中等症AMIに対しては, 急性期でも動脈グラフトのみを使って安全にCABGが施行可能であった. |