アブストラクト(45巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 実験的脳死下心機能維持に関する研究-遠心ポンプによる左心流量補助効果の検討-
Subtitle :
Authors : 古梶清和, 川田志明
Authors(kana) :
Organization : 慶應義塾大学医学部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 45
Number : 7
Page : 974-984
Year/Month : 1997 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 脳死という特殊環境下において, 経時的に低下するドナー臓器機能の評価と維持は, 臓器移植の成否に関わる重要な問題である. ドナー心保存を目指し脳死下における心機能維持に対する機械的流量補助効果について, 雑種成犬を用いて実験的検討を行った. 実験的脳死モデル作製後, 遠心ポンプを用いた経大動脈弁的左室脱血, 大腿動脈下血の左心バイパス(LHB)による左心流量補助群(L群n=10)と非補助群(C群n=10)の2群で経時的に心機能を評価し, また病理組織学的検討を行った. 脳死下では約60%の流量補助により, 左室の収縮期圧は約30%減少し, 拡張末期圧, Max. dp/dt共有意の減少を示した. 脳死後左心機能の指標となるMax. dp/dt Emaxは, 両群肝脳死前の約70%に低下し, 以後漸減傾向を示した. C群では, 脳死後収縮終末期最大圧容積比(Emax). は3時間以降, Max. dp/dtは4時間以降脳死直後に比し有意な低下を示し, 心機能を保ち得たのは約3時間と考えられた. これに対しL群では, 脳死後6時間まではMax. dp/dt Emax共に有意な低下を示さず, 脳死直後と変わらない左心機能を維持し得たと考えられた. 病理組織学的にもC群が脳死後6時間でcontraction bandsの出現などの虚血性変化を示す所見を認めたのに対し, L群はほぼ正常な心筋組織を保っていた. 以上の結果から, 脳死モデルでは, 脳死下の心機能維持に対し, LHBは有効であると考えられ, 心臓移植に対するドナー側での心室補助装置(VAS)のbridge useの可能性が示唆された. またLHBによる循環血流維持の点から心臓以外の臓器機能保存の可能性も考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 脳死モデル, 左心バイパス, 心臓移植, Max. dp/dt, Emax
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