アブストラクト(45巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 脳分離体外循環を用いた上行・弓部大動脈人工血管置換術の早期及び遠隔期成績
Subtitle :
Authors : 内田直樹, 渡辺卓, 篠崎滋, 新堀耕基, 貞弘光章, 近江三喜男, 田林晄一
Authors(kana) :
Organization : 東北大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 45
Number : 8
Page : 1076-1083
Year/Month : 1997 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1987年から1994年までの8年間に, 脳分離体外循環を用いて上行ないし弓部大動脈人工血管置換術をうけた116例を対象とし, 早期成績, 手術危険因子, 遠隔期生存率, 遠隔期危険因子を解析した. 術式別では, 上行置換13例, 基部置換2例, 弓部置換93例, 大動脈基部から弓部までの置換8例であった. 脳分離送血は3分枝送血を80例に, 36例に2分枝以下の送血を行った. 脳分離循環時間は2分から273分, 平均112分であった. 灌流圧は23torrから88torr, 灌流量は300ml/minから950ml/minであった. 病院死亡は19例(16.4%)で, 主な死因は多臓器不全であった. 多変量解析では, 高齢, 虚血性心疾患の合併, 術後脳障害, 低心拍出量症候群, 再手術を要する大量出血, 腎不全の6因子が独立して有意な手術危険因子と解析された. また術後脳障害の危険因子は末梢血管疾患の合併, 低心拍出症候群では長時間の麻酔, 大量出血では正中兼胸部皮膚切開・長時間の人工心及び長時間の脳分離体外循環, 腎不全では術前の腎機能障害・20℃未満の低体温及び長時間の麻酔であった. 生存退院例の遠隔期調査では, 遠隔期死亡が18例あり, 瘤破裂, 突然死や追加手臨時の死亡などの血管死が9例と半数にあった. 全体の術後5年生存率は69%であった. また解離性の5年生存率は63%, 真性の5年生存率は82%と, 病態別に有意な差はなかった. 多変量解析では, 慢性閉塞性肺疾患と術後大量出血が独立して有意な遠隔期危険因子であった. 以上の結果から, 脳分離体外循環による上行弓部大動脈人工血管置換術は安全な方法であると結論された. また危険因子のある患者では特に術前・術中の注意深い対応が必要であると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 脳分離体外循環, 手術危険因子, 早期成績, 遠隔期成績, 遠隔期危険因子
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