アブストラクト(45巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 慢性透析症例に対する開心術-治療ストラテジーの検討-
Subtitle :
Authors : 中山義博, 坂田隆造, 植山浩二, 浦正史, 蒲原啓司, 摩文仁克人, 新井善雄
Authors(kana) :
Organization : 熊本中央病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 45
Number : 10
Page : 1661-1666
Year/Month : 1997 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 慢性透析症例に対する開心術について周術期管理と術式の面から検討を加えた. 対象は開設以来8年間に施行した慢性透析症例に対する関心術54例で平均年齢62.8歳, 男女比41:13であった. 50例は血液透析(HD)にて維持されており4例は持続的腹膜透析(CAPD)症例であった. 施行手術は42例(78%)が冠状動脈バイパス術(CABG)単独で残りは弁膜症, 先天性心疾患, 大動脈瘤に対する施行例であった. 術前透析はHD症例の場合術前日一回のみとし, CAPD症例は通常と同様に行った. 術中は体外循環に組み込んだダイアライザーによる除水と大量の補液による血液濾過法(HF)にて水電解質の調整を行った. 術後の血液浄化は1日目に維持透析に帰する(HD症例はHD)ことで行った. この方法で術当日より翌朝にかけ保存的療法にて水, 電解質コントロールが行えず, 何らかの血液浄化を必要とした症例はなかった. 術後透析は初期では初回HDを慎重に行い, 術後2日目にHDを追加する方法を取った. しかし, 後期を中心とする30例(60%)は透析技術の向上と共に初回HDにて十分な溶質, 溶媒除去が行い得, 術後3日目の維持透析へスムーズに移行可能であった. CABG単独例で冠状動脈の石灰化をAHAの冠状動脈分類上4.5±2.3分節に認めた. これは対照群より有意に高値であり, より末梢側での吻合の必要性を意味した. 上行大動脈の石灰化のため術式の変更を余儀なくされた症例を6例(14.3%)に認め, このうち3例は心室細動下の手術となった. また, 弁置換症例で術後HDを契機とする敗血症にて1例失った. これらの結果より以下の結論を得た. (1)術前管理として特別な方法は必要ない. (2)術後1日目のHDは十分施行可能且つ有用であった. (3)動脈グラフトは通常の症例以上に有用である. (4)弁置換症例に限り感染予防の面より術後のPD導入を考慮する必要がある.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 血液透析, 血液濾過法, 開心術, CABG
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