Abstract : |
[背景]近年グルタミン酸の神経毒性と, その一過性脳虚血後の遅発性神経細胞死への関与が証明されている. [目的]教室で開発したウサギ対麻痺生存モデルを用いて外因性L-glutamateの灌流濃度を変化させ, 遅発性対麻痺の発生機序を実験的に検討した. [方法] New Zealand white rabbit(メス, 3.5~4.0kg)を用いてハロセン吸入麻酔下, 無菌的に開腹し腎動脈下腹部大動脈を39℃の各溶液で分節的に5分間局所灌流する. 6, 24, 48時間後の神経学的所見をmodified Tarlov scaleを用いて判定後, 脊髄標本を作製し病理組織学的に検索した. I群:control群(n=6)は生理食塩水10ml(39℃)で5分間局所灌流, II群:glutamate群(n=6)はL-glutamate 20mM溶液10ml(39℃)で5分間局所灌流した. [結果]神経学的所見はI群:正常(n=6), II群:急性対麻痺(n=3), 遅発性対麻痺(n=3)を示した. 6, 24, 48時間後のいずれの時点でも両群間に統計学的に有意差を認めた. 病理組織学的にはI群(n=5):正常, II群(n=5):前角細胞の細胞質の空胞化・変形萎縮及び灰白質近傍の白質で軸索の腫大等の中等度の障害像の所見を認めた. [結論]ウサギ対麻痺生存モデルにおいて, 5分間の虚血と外因性L-glutamate 20mM溶液の局所灌流で遅発性対麻痺が発生した. 境界病変とされる遅発性神経障害の発生機序としてグルタミン酸の神経毒性が関与することが示唆された. |