Abstract : |
冠状動脈バイパス術(CABG)患者の術前アスピリン(ASA)内服中止期間を短縮することを目的に, 待機的CABG患者22例を対象として術後出血量, 輸血量について検討した. 方法は, 対象となった22例を無作為に術前2日間ASA内服を中止するI群(11例)と, 術前日までASA内服を継続するII群(11例)とに分類し, ASAを7日間中止した同時期の待機的CABG患者40例(対照群:ASA非服用例を含む)と比較した. 周術期の出血制御にはすべての患者にトラネキサム酸による術中抗線溶療法を行った. 3群間の患者の術前状態, 血小板数, ヘモグロビン値, 手術時間, 人工心肺時間, 大動脈遮断時間に有意差は無く, 各群間の術後出血量(閉胸後6時間でI群221±69ml, II群183±77ml, 対照群172±80ml), 濃厚赤血球輸血頻度(I群45.5%, II群63.6%, 対照群47.5%)にも有意差は無かった. しかし, 血小板輸血頻度(I群18.2%, II群54.5%, 対照群7.5%)は, 術前日までASA内服を継続したII群が対照群より有意に高値を示したのに対し(p<0.01), I群と対照群との間には有意差を認めなかった. 以上のことから, ASA内服を2日間中止すれば7日間中止例とほぼ同等の出血量, 輸血量でCABGが行えることが示され, CABGを受ける患者の術前ASA内服中止期間は従来の基準(術前7日間)よりも短縮できる可能性が示唆された. |