Abstract : |
開心術中の心筋保護は重要な問題であり, 多くの工夫がなされている. blood cardiopleigaは酸素供給能に優れ, 良好な緩衝作用を有するため広く用いられている. しかしその一方で手術視野の確保が不十分, 操作が煩雑などの欠点を有する. blood cardiopleigaの利点特に細胞内緩衝作用を取り入れたcrytalloid cardioplegia(Histidine Buffered Cardioplegia;HBS)の利点について報告してきた. 今回臨床例に応用しその有用性についてCold Blood Cardioplegia(CBC)と比較検討した. 症例は35歳から75歳までの男女(43:25)68例(HBS群(28例), CBC群(40例)について検討した. HBSは4℃に冷却し初回10ml/kg以後30分毎に5ml/kgを投与した. CBC群ではGIKで心停止を得た後初回10ml/kg, 以後30分毎に7ml/kgのCBCを投与し, 氷による局所冷却を併用した. 体外循環開始前と大動脈遮断解除後30分の時点で左室内カテーテルと心表面エコーよりEmaxを測定した. 体外循環離脱後の心係数, 強心剤使用量を検討した. また術前自己血貯血を行い, 他家血輸血回避率についても検討した. 手術死亡はみられなかった. 大動脈遮断解除後, HBS群では全例自己心拍を再開したのに対し, CBC群で. は6例に対し計12回のcardioversionsを要した. EmaxはHBS群で有意に良好であり(5.2±0.6mmHg/cm3 vs 3.4±0.4mmHg/cm3), 遮断解除3時間後からはHBS群で有意に良好な心係数を示し(3時間m 3.65±0.15L/min/m2 vs 3.21±0.12L/min/m2), しかも強心剤投与量はHBS群で有意に低値であった. 他家血輸血回避率はHBS群(60%), CBC群(47%)とHBS群で高い傾向にあった. HBSは嫌気性解糖を亢進し, 虚血中においてもエネルギー産生が可能であり, 良好な心機能回復をもたらした. 氷による局所冷却を要さず簡便であること, 視野の確保が容易であることも利点であると考えられる. |