Abstract : |
冠状動脈バイパス術に用いられる右胃大網動脈(GEA)の組織学的, 力学的特性を内胸動脈(IMA)のそれと比較検討した. 吻合に用いられる部位における中膜平滑筋層の厚さはGEA:274.2±12.5μm, IMA:169.1±8.1μmであり, GEAが約1.62倍の厚さを示した. 内側半径はGEA:543.7±21.8μm, IMA:583.1±12.0μmでIMAが大きい値を示したが有意差はなかった. GEAにおいて平滑筋層の厚さは起始部, 中央部, 遠位部の各部位で有意差を認めなかった. 内側半径は起始部:734.0±15.8μm, 中央部:643.2±14.6μm, 遠位端:495.5±14.5μmであり, 末梢になるに従い小さくなる傾向を示したが, 起始部と中央部, 遠位端との間にのみ有意差を認めた. GEA, IMAがどのような状態で力学的平衡に達するかを, 血管中膜の弾性張力-内径関係とLaplaceの式から推定した. 同一血管内圧においてはGEAはIMAよりも弾性張力, 内側半径共に小さい値をとると推定された. 内側半径の比較では組織学的検索とほぼ同様の結果が得られた. GEAにおいてはIMAよりも中膜平滑筋層の厚さが大きいこと, また内側半径が小さい傾向にあることから, 平滑筋繊維が活動状態となる攣縮の場合にはGEAの内径はIMAに比して, 更に小さくなることが予測されるので, 手術操作及び周術期においてGEAの取り扱いに注意が必要である. |