Abstract : |
ナトリウム利尿ペプタイド(ANP, BNP)は心, 腎保護作用を有する心臓由来のホルモンである. われわれは, 人工心肺施行に伴う人為的心不全状態におけるANP, BNPの変動と, 心, 腎機能との関係について検討した. 成人開心術施行症例45例を対象とし, 術前ANP 40pg/ml未満のA1群(n=23)とそれ以上のA2群(n=22)に分けて検討した. また術前BNPが正常値の5倍以上のB1群(n=8)と10倍以上のB2群(n=10)に分類し, 術前, 術直後, 術後第3病日における心, 腎機能について比較検討した. 各群とも術前の心, 腎機能に有意差はなかった. A1, A2群間では人工心肺中分時尿量及び術後の心機能において有意差はなかった. 一方B1群はB2群に比して, 人工心肺中分時尿量は有意に多く, 術直後及び第3病日の心係数は有意に高値を示した. 術前BNP値と術直後心係数に, 第3病日におけるBNP値と心係数に有意な負の相関関係が認められた. 以上より術前BNP高値を認める開心術施行症例は, 術中術後の心, 腎機能において潜在性リスクを有する可能性が示唆され, 術前より人工心肺流量や術中術後の心, 腎機能保護を考える上で術後管理の参考となると考えられた. |