| Abstract ： |
1996年3月から12月までの間に, 15症例に対し橈骨動脈(RA)を用いた多枝冠状動脈バイパス術(CABG)を施行した. そのうち10症例から採取したRAの中枢側断端と末梢側断端に対し病理組織学的検討を行った. 両断端の性状を鏡検的に検討し, NIH Image 1.57を用いて内膜, 中膜の肥厚度, 及び動脈硬化度を算出, 両側を比較した. また両側の内腔の大きさも算出し比較した. 病理組織学的には内弾性板はよく発達しており, 中膜は弾性線維に乏しく, 平滑筋細胞に富んでいた. RAの内膜肥厚度は中枢側で0.098±0.018, 末梢側で0.130±0.057と中枢側に比べて末梢側に強い傾向にあった. 中膜肥厚度は中枢側0.558±0.062, 末梢側0.515±0.051と差を認めなかった. 両肥厚度より算出した動脈硬化度は中枢側で0.117±0.033, 末梢側で0.258±0.132と有意差はないものの末梢側で大きい傾向にあった. 内腔は末梢側で2.57±0.35(mm2), 中枢側で3.49±0.39(mm2)と末梢側に比べて中枢側で有意に大きかった(p<0.01). 以上の結果よりRAはCABGのグラフト材として有用であると考えられ, 特に中枢側ほど組織学的に良好であると考えられた. |
