アブストラクト(45巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部悪性腫瘍による上大静脈症候群の外科治療-腋窩・大腿静脈一時バイパスの有用性-
Subtitle :
Authors : 下川新二, 山下拓哉, 金城玉洋, 渡辺俊一, 山岡章浩, 森山由紀則, 豊平均, 平明
Authors(kana) :
Organization : 鹿児島大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 45
Number : 11
Page : 1827-1832
Year/Month : 1997 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部腫瘍による上大静脈(SVC)症候群の手術では, 全身麻酔導入時にSVC症候群が致死的に悪化することがある. これにわれわれは腋窩・大腿静脈一時バイパスで対応し有用性を認めている. 6例(悪性縦隔腫瘍4例, 肺癌2例)で全身麻酔導入前, 局所麻酔下にヘパリンを全身投与後, 各静脈径に合致したカニューラを挿入し, 腋窩・大腿静脈間にバイパスを作製した. バイパス開通後, 内頸静脈圧は全例で低下した. その状態で全身麻酔を導入し, SVC症候群の悪化はなくstand-byしていた人工心肺をこの時点で必要とした症例はなかった. 手術操作上, 最終的には全例で人工心肺を用い, うち3例ではバイパス間に設けていた側枝を人工心肺脱血回路の一部として用いた. 手術は人工血管による静脈バイパス術を主に行い, 病院死1例を含む全例でSVC症候群は速やかに改善した. 一時バイパス関連の合併症は軽微であった. 本バイパスは局所麻酔下にカニューラの挿入のみで作製でき, 腋窩静脈から大腿静脈へ圧較差による速やかな静脈還流を可能にし, 以後の安全な麻酔導入及び手術操作を保証する. また, 人工心肺下に手術する際には, バイパス間に設けた側枝を脱血回路の一部として利用できる. バイパス作製に伴う重篤な合併症はなく, 胸部腫瘍により急速に発症し中枢神経症状や上気道閉塞症状を伴ったSVC症候群に対する緊急手術時には, 本バイパスは良い適応となり致死的な状況を確実に回避しうる推奨される補助手段と考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 上大静脈症候群, 胸部悪性腫瘍, 腋窩・大腿静脈一時バイパス
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