Abstract : |
雑種成犬左片肺移植モデル(LPDG液, 4℃, 18時間保存)を用い, 移植再灌流後早期の血中Thromboxane A2とProstaglandin I2値に着目して, トロンボキサン合成酵素阻害作用を有するPGI2 Analogue(ONO-1301)の再立流障害に対する効果を以下の3群で比較検討した. ドナー曲玉流直前にHeparin(40U/kg/min)を, レシピエント移植再灌流時に生理食塩水(1ml/kg/min)をそれぞれ10分間投与したコントロール群(n=7)と, 同操作下にONO-1301(10μg/kg/min)をそれぞれ10分間投与したI2 10群(11=6), ONO-1301をドナーに10分間レシピエントに50分間投与したI2 50群(n=6)について移植肺機能を経時的に6時間評価し, 血中の6-keto-Prostaglandin F1α, Thromboxane B2, と過酸化脂質濃度を測定した. 再灌流後の移植肺機能は全経過を通じて, コントロール群に比しI2 10群では動脈血酸素分圧(PaO2), 肺胞・動脈血酸素分圧較差(A-aDO2), 平均肺動脈圧(meanPAP)と肺血管抵抗係数(PVRI)で, I2 50群ではPaO2, PaCO2とPVRIで有意に良好であった. 血中のTXB2値と6-keto-PGF1α値は再灌流早期よりI2 10, I2 50両群に比しコントロール群にて有意に高値を示した. 評価終了後の移植肺の組織学的検討ではコントロール群にて血管周囲の著明な浮腫像が認められたが, I2 10, I2 50両群でも軽度の浮腫像が認められた. すべての評価においてI2 10, I2 50訴訟には有意差は認めなかった. ドナー肺灌流直前とレシピエント移植再灌流時のONO-1301投与(10μg/kg/min, 10分間)により再灌流後のTXA2とPGI2の上昇は有意に抑制され, 良好な移植肺機能が得られた. 肺移植術後早期においてTXA2とPGI2の均衡を保持することは, 移植肺機能の維持に効果的であると考えられた. |