Abstract : |
食道切除後の再建臓器である胃にまれに消化性潰瘍の発生が報告されている. 著者らは, 後縦隔再建胃管に潰瘍の発生した症例を5例経験したので報告する. 症例1は, 食道癌根治術10日後に右下葉に肺炎を発症し, 内視鏡検査で胃管上部前壁の潰瘍性病変と気管膜様部に瘻孔を認めた. 胃管潰瘍により胃管気管瘻を形成したものと診断し, 胃管部分切除と頸部食道外瘻を行った. その他の4例は, 胃管の中下部に潰瘍が見られ1例では潰瘍が多発していた. 5例中2例に術後照射が行われ, 1例ではRapid urease testと病理組織学的検査でヘリコバクターが確認された. また, 当科外来通院中の食道癌根治術後胃管再建施行16例(今回の1例を含む)でヘリコバクターの検出を行ったところ9例(56%)で陽性であった. 空腹時血中ガストリン値は平均205pg/mlと高値であったが, 陽性例と陰性例で差はなかった. 胃管潰瘍の発症には術後照射やヘリコバクター感染の関与も示唆された. 近年, 食道切除後の再建臓器として汎用されている再建胃に癌や潰瘍の発生が報告されている. 今回, 著者らは当科で施行した胸部食道癌術後の再建胃管に潰瘍の発症した5例を経験したので文献的考察を加え報告する. |