Abstract : |
解離性大動脈瘤は大動脈内膜の亀裂により生ずる. 内膜亀裂は内膜の一部に限られることが多く, 全周にわたることはまれである. われわれは左房内粘液腫手術後約5年をほぼ無症状で経過して発見された, 内膜全周の断裂により真腔の離断を伴ったStanford A型大動脈解離の血行再建術を経験した. 外科の立場からかかる病型に対する考察を加えて報告する. 「症例」症例:57歳, 男性. 主訴:咳嗽. 家族歴:特記すべきことはなし. 既往歴:高血圧, 左房内粘液腫. 現病歴:1990年6月29日左房内粘液腫摘出術を当院において行った. 上行大動脈送血による体外循環下に行われたが術中所見では上行大動脈壁の性状や大動脈径に特に異常を認めなかった. 術後経過は良好であった. 高血圧を指摘されてはいたが降圧療法は受けていなかった. 術後2年以降は近医の血圧管理を受ける約束であったが, その後は3年間放置されていた. 粘液腫術後約5年後の1995年3月, 咳嗽を主訴として当院の呼吸器内科を受診した. 胸部X線写真で右上縦隔陰影の拡大を指摘され, 当初はannulo-aortic ectasiaも疑われた. 全経過を通じて胸背部痛等の動脈解離を疑わせる自覚所見はなかった. |