| Abstract : |
心筋硬塞における異常Q波の存在は極めて特徴的でありその診断的価値は高いが, 異常Q波は必ずしも心筋壊死を意味するものではない. 術前の前胸部誘導心電図で異常Q波を認めた陳旧性前壁中隔硬塞36例に対し前下行枝を含んだ1枝あるいは多枝バイパス術を行い, そのうち4例(11%)に術後の心電図で異常Q波の消失, R波の出現を認めたので, 異常Q波の消失機序およびA-Cバイパス術が左室機能へ及ぼす影響について検討を加え報告する. 4例は全て安静時あるいは軽負荷時に胸痛, 胸部絞扼感を訴え, NYHA機能分類でIII〜IV度であった. A-Cバイパス術後には全例胸痛発作は消失し, ニトロール舌下錠は全く不要となった. 前胸部誘導心電図では, Q波の消失, R波の出現を術後1日目, 3日目, 6日目, 19日日に認め, 左室造影では血行再建部位の壁運動の改善を認めた. また, 左室機能ではCIは術前2.72±0.78l/min/m2より術後3.82±0.23l/min/m2へ40.4%の上昇を示し, SVIも26.1%増加した. LVEDPは術前11.3±2.1mmHgより術後4.7±0.9mmHgへと著明に低下し, EFは0.54±0.16より0.64±0.14へ18.5%増加した. 201Tlを用いた負荷心筋シンチグラフィーでは, 術前みられた虚血部は術後消失し, 虚血部心筋の血流改善が考えられた. A-Cバイパス術後の異常Q波消失の機序として, 電気的に非活動的な硬塞周囲の虚血部の血流が改善されたことにより同部の電気的活動性が再現したためと考えられた. また, 反対側の下壁に新たな硬塞が生じたためのcancelling effectも考えられた. これら4例のようにA-Cバイパス術後に異常Q波が消失した例では症状の消失のみならず左室asynergyの消失, 左室機能の改善が得られた. |